キャンディ♡キャンディ
原作 水木杏子  漫画 いがらしゆみこ



講談社 KCなかよし 全9巻
発行 昭和51年~54年

 昭和50年代少女マンガの金字塔的な作品です。アニメ化もされ有名なのですが、現在はある事情で絶版となっています。プレミア価格を覚悟で古書店でそろえる方法もありますが、こんなに有名な作品が手軽に読めないのは残念です。講談社以外の中央公論社からも文庫化や愛蔵版化までされ近年まで版を重ねており、ロングセラーだったのですが…。

 写真はAKIが昭和51年にアニメが始まったのをきっかけに買っていたもので、当時は3巻まで出版されていました。よって第4巻から初版です。実は我が家にはモグベエが所持していたキャンディがもう1セットあります。
 なかよしKCは版を重ね、カバーデザインも何度か変更しています。オリジナルは背文字が黒です。やがて価格変更時にタイトル文字だけが赤に変更されます。その後KCコミックス全体のデザイン変更に合わせて下の著者部分が赤バック、上が白地に赤文字と味気ない背表紙に統一されてしまいました。
 もしお金を出して購入するなら、黒文字背表紙をおすすめします。また、第9巻は初版のみの特典で折込カラーピンナップもついています。
                             

 お話は孤児のキャンディがお金持ちの養女になり、それからも苦労しながら幸せになるという内容です。孤児でありながら逆境に負けずに明るくがんばる主人公、小さい時に会ったあこがれの丘の上の王子さま、キャンディを好きになる男の子たち、周囲の無理解といじわる、など少女マンガの王道をふんだんに盛り込んで、大ヒットしたのもうなずけます。また主人公が決して美人ではなく、そばかすに鼻ペチャと親しみやすい設定であることもヒットの要因でしょう。
 また、丘の上の王子さまは誰か?謎の養父ウィリアム・A・アードレーおじさまの正体などミステリアスな伏線も興味は尽きません。

 第3巻が出版された頃にアニメ化されましたが、連載が月刊誌というスローペースなのでアニメではストーリーをふくらませたりしました。やはり後半では原作に追いついてしまい、原作では行かなかったはずの戦地へ従軍看護婦としてキャンディを行かせたりなどオリジナルストーリーも作り、苦肉の策をとっていました。
 それでも最終回はなんと原作の最終回の前に放送という事態になり、アニメと原作のラストがかなり違うのはそのためです。

 アニメも諸事情で再放送がなく、国内でもTVシリーズが全話ソフト化されていない状態です。記憶から薄れがちなアニメですが、AKIが長年抱いている疑問があります。それは・・・

 アニメの丘の上の王子さまは誰じゃ?
という疑問です。

 原作を知っている人は「そんなの決まっているじゃん」ということでしょう。
 ところが、アニメではキャンディが丘の上の王子様に会う年齢設定が原作とは違っているのです。
 原作ではアニーから決別の手紙をもらい、泣いているときにポニーの丘で王子様に会います。それから6年たってラガン家にもらわれていったキャンディは王子様にそっくりなアンソニーに出会うのです。

 ところがアニメでは、丘の上の王子さまに会ったその日に里子の話があり、ラガン家にもらわれて行きます。実際キャンディもアードレー家のバッジを見て「あの少年に会える」と思って、もらわれていくことを承知しており、、ラガン家にあった丘の上の王子さまの肖像画を見て小間使いのドロシーに「17歳くらいのこの男の子」とたずねています。ネタばれですが、丘の上の王子様の正体が原作ではウィリアム・A・アードレー大おじさまの少年期であったのに対し、アニメではアンソニーと出会う時点で少年の格好をしていた王子様が大おじさま=アルバートさんであるわけがありません。アンソニーでないならいったい誰?(゜∇゜ ;)アンソニーの生霊か?

 どうもアニメでは原作の先々の展開を理解していなかったようで、これは物語の重要な骨格を否定するような致命的なミスです。しかしこの骨格こそがキャンディの世界であり、「あしながおじさん」を骨格にしたとも言われるゆえんです。AKIは連載途中にして大おじさまの正体が推測できましたから、熱心なファンもアニメを見て「アレ?」と思ったことでしょう。

 アニメでは最後は丘の上の王子様の正体が原作のように明かされますが、はじめの矛盾はどう解決されるのでしょうか?長寿番組だったので最初の設定を忘れて誰も突っ込まなかったのでしょうか?途中で矛盾の調整があったかは(どう調整するんじゃ・・・)AKIは記憶がありません。
 ソフト化がなかなかされないのはこの矛盾があまりにも大きいことも原因でしょうか?キャスト、音楽はすばらしいのにこれでは失敗作といわれても仕方ありません。
 しかし、なぜかどこのサイトでもこの点を指摘したものを見たことがありません(あったらごめんね)。公然の秘密なのか、口に出すのも恐ろしい話題なのか、口に出すと呪われるのか…。謎です。


小説 キャンディ・キャンディ
著者 名木田恵子



ブッキング 全1巻
発行 2004年

 以前出版されていた小説版の復刊です。オリジナルは1978年から出版されましたが、現在は絶版となっています。
 今回の復刊はファンのリクエストを受けてブッキングから2003年に発行されました。以前の全3巻を1冊にまとめてあります。残念ながらオリジナルに掲載されていた、いがらしゆみこのイラストはカットされています。著者名は水木杏子ではなく名木田恵子名義です。
 
 第1部、2部は話を追って展開しており、キャンディがセントポール学院を自主退学するまでが書かれています。
 おそらく続きが書かれる予定だったはずですが、都合で第3部は物語が終わった後のキャンディからの書簡集として出版されました。
 AKIは昔、オリジナルを立ち読みしたのですが、キャンディとアルバートさん(丘の上の王子さま)の出会いの説明がやけにくどいな、と感じました。
 巻末のキャンディとアルバートさん書簡集はコミックの終了時点から1年後まで書かれていますが、最後は二人の愛が感じられ、やがては結ばれる予感で終わっています。
 現在でも入手できます。値段は高いですが、一読の価値はあるでしょう。



それでは次はモグベエの感想です。長くなることと、ネタバレのオンパレードなのを心して読んでください。
モグベエ談

 この作品は思い入れや思い出が多すぎて、何から書けばよいのやら・・・状態です。

 私が初めてキャンディと出会ったのは、昭和51年10月、テレビアニメの初回を偶然見たときです。その第1話だけでぐいぐいひき込まれ、毎週見ようと決意したのでした。
 オープニングを見そびれたため、作品のタイトルが気になって仕方なかったのですが、番組最後にプレゼントの応募ハガキの書き方が放送され、「キャンディ・キャンディ係まで」というのを聞いて耳を疑いました。まさか、主人公の名前を2回繰り返すのが番組タイトルだとは・・・(@o@)

 アニメに夢中になった私は当然のごとく原作漫画も読みたくなり、母に「テストが終わったら買ってきてね」と頼みました。すると元々漫画が好きではない母が、どうした風の吹き回しかすぐに購入してしまったのです。おかげで私は誘惑に打ち勝つのが大変でした。

 当時私は中学1年生。この漫画は同級生たちにも人気があることがほどなく分かり、度々話題にも上りました。昭和51年度のうちに私もAKIさん同様、年齢と月日の流れを考えて丘の上の王子さま=アルバートさんではないかと考えたのですが(さすがに大おじ様と同一人物だとは思いもつきませんでした)、同級生たちに話したところ一笑にふされてしまいました。皆、王子さまはアンソニーだと言うのです。アンソニーだとしたら、6歳のキャンディに出会ったとき10歳にも満たないお子様だったはずなので、明らかにおかしいのですが・・・。

 とにかくこの作品は私たちの世代の女子では知らない人に出会ったことがないほど有名で(いわゆる「キャンディ世代」?)、何も前触れもなく「ねえ、あなたはアンソニー派?テリィ派?」と聞いても必ずどちらかの名前を即答してくれるほどです。私の知る限りではテリィ派がダントツなのですが、私は断然アンソニーです。思えば、アンソニーが、私が漫画の人物に恋した初めての人なのです(*^^*ゞ。お正月に富士急ハイランドでジェットコースターに乗ったとき、悲鳴の代わりに「アンソニー!!」と叫んだのも良い思い出です。←バカ
 もっともその3ヵ月後には私の心の彼はマルスにとって代わられましたが(笑)。
(ちなみにその後もコナン、えん魔くんと中学時代は2次元男子に夢中でした)

 でも、初期に私の心を引きつけたのは、そんなミーハーな気持ちよりも、キャンディの魅力そのものであったのは間違いありません。両親がいなくても、限りなく明るく優しいキャンディ。原作の、いじめられても明るく跳ね返す(特に、イヤミを言われたときのウィットに富んだ返しは最高!)キャンディに憧れ、アニメの悲しいときには泣くキャンディに同情し・・・とにかく彼女が大好きでした。同時に、イライザとニールのいじめの酷さに本気で立腹したものです。

 当時、私のクラスにはいじめがありました。私の目から見て被害者側には何の落ち度もなく、理不尽ないじめは見るに耐えかねるものでした。しかし、私にはいじめをやめさせる力はありません。小学生時代は担任の先生がいじめの卑怯さを何度となくクラス全体に話し、それがブレーキになっていたので私は先生に動いてほしかったのです。
 ところがこのクラスでは、担任の若い男性教師はいじめを傍観しています。私は「自分は少しも悪いことをしていないのにいじめられるのはどんな気持ちか」を感覚として分かってほしくて、その先生に「キャンディ・キャンディ」の単行本を貸し、強く頼んで読んでもらいました。結果、少しは分かってくれたようで、学級の時間にクラス全体に話をしてくれました。効果は絶大とは言えませんが、多少ましになった感じです。


 当時なぜか、キャンディのイメージガールとしてキャロライン洋子(当時14歳)が選ばれました。キャンディグッズに使われる絵は大きく分けて2種類あり、ひとつは原作そのものの絵で、もうひとつは原作でもアニメでもない、簡単な線にデフォルメされた絵なのです。そしてそれが、キャロライン洋子の雰囲気を持っているのです。
(他にアニメ絵のグッズもありましたが、数は少なかったです)
 アニメや漫画のキャラクターが商品に使われるのは珍しくないのに、どうしてキャンディだけ「イメージガール」などが設けられたのか、不思議な感じです。


 さて、ここからは少々ですが、印象に残ったキャラクターに対しコメントしてみたいと思います。

★イライザ
 まだ子どもながら、「根っからの悪人」と言い切ってしまっても良いでしょう。どうやったらこんな人間に育つのか、不思議なくらい嫌なヤツです。
 ・・・と読者の誰もが思ったであろうと思い込んでいたのですが、20代のころ同い年の同僚が「私はイライザが好きで、キャンディいじめを応援していた」と発言したのでビックリ!「キャンディは良い子すぎる。それに比べてイライザは自分に正直」だからとか。今思うと、きっと彼女は「小公女セーラ」のラビニアも好きなんでしょうね。

★ニール
 イライザ同様、「救いようのない人間」なのは確かなのですが、イライザとは対照的に終盤キャンディの魅力に気づいた点は褒めてあげたいです。手のひらを返したようなラブアタックは傍(はた)から見れば笑えますが、キャンディにしてみれば迷惑千万だったでしょう。
 心変わりした後も性格は変わらず、テリィの名を使ってキャンディを呼び出したり、大おばさまに「キャンディと結婚できなければ志願兵になる」などと言って婚約をとりつけたり、と卑怯さ全開です。
 しかし、あれだけキャンディをいじめた過去がありながら、自分の好意を彼女は喜ぶはずだと信じられる神経は摩訶不思議というか、おみごとというか・・・。

★ステア
 私としてはアンソニーに次ぎ大好きな男性キャラだったのですが、まさか志願兵になった挙げ句、戦死してしまうとは・・・。
 少女漫画に戦争が出てくること自体珍しいですが、作者は作品を通じて反戦の気持ちを読者に伝えたかったのでしょうね。
 でも、大好きな男性キャラがふたりも死んで、私は悲しいです。°・(ノД`)・°・


★スザナ
 当時、友人たちは「キャンディからテリィを取った」と彼女に厳しい視線を向けていました。私は「そう言ってはかわいそう」と思いつつも主人公目線なので、「キャンディとテリィはこんなに愛し合っているのに・・・スザナさえ身を引いてくれれば」と思ったりしました。
 でも今読み返すと、彼女はふたりの幸せを思って自殺までしようとしているんですよね。こんな彼女を、どうして身勝手だと責められるでしょうか。私は自殺を止めたキャンディも、責任をとってスザナを選んだテリィも立派だと思います。
 その後テリィが苦しみ、ひとり旅立ったときもスザナは彼を信じて待つとコメントしたのには感心。彼女も本当にいい人なので、テリィが気持ちを切り替えさえすれば良い夫婦になれると思うのですが・・・。


★アルバートさん
 良い人です。大人になった今見返すと、別の魅力も発見できます。「あしながおじさん」みたいに、このままキャンディと結ばれてくれれば良いと思うのですが・・・。
 アルバートさんがキャンディを気に入っていたのはよく分かります。よく分かるだけに疑問なのは、アンソニー、テリィ、とキャンディが恋することに少しの嫉妬も感じなかったのか、ということです。
 アンソニーのころはアルバートさんがキャンディと会うことも少なく、彼女も幼かったので保護者のような目で見ていたと思いますが、キャンディが看護婦になって一緒に住むようになった後、テリィラブな彼女を見て、本当に心は揺れなかったのか不思議です。
 丁寧に読み返してもアルバートさんとキャンディの間には恋愛感情のようなものは見当たらず・・・本当にそれで良いの?ともどかしさを覚えてしまいます。


 最後に、作画のいがらしゆみこさんは著作権のことでいろいろありますが、私は彼女の絵柄が大好きです。顔ももちろん好きですが、私が注目したのは「手」!他の少女漫画と違い、なんとも肉付きがよく、触ったらポチャポチャっとしていそうな手がとっても魅力的です。こんな絵が描ける人に、悪い人はいないと思うのですが・・・。



最後に、イラスト集もありました。当時2冊が出版されています。

なかよしデラックスアルバム
キャンディ・キャンディ イラスト集


講談社 昭和52年発行

2007.08 記





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