今月のコミックス
アニメ原作以外のAKI の想い出のコミックスを紹介しています



愛と死の砂時計
和田慎二 著
マーガレットコミックス 全1巻
昭和59年

 前回は「永島慎二」で慎二つながりではないのですが、今回は「和田慎二」です。「スケバン刑事」「ピグマリオ」で有名な作家ですが、マーガレット出身で初期は短編を発表していました。
 少女マンガの中にあってミステリーやファンタジーのジャンルが多いのも特徴です。「愛と死…」もミステリーで、私立探偵の神恭一郎のデビュー作でもあります。神恭一郎はその後、多くの和田作品に登場、「スケバン刑事」でも重要な役まわりです。

 殺人の罪を着せられ、死刑執行があと1ヶ月にせまった婚約者の無実をはらすために、ヒロインが奔走するという内容です。死刑執行までの時間を砂時計に例えたタイトルは上手いと感じます。ヒロインを助けて、一緒に捜査するのは私立探偵の神恭一郎。長身、長髪、サングラスの出で立ちですが、まだ洗練されていないところはご愛嬌です。
 陰惨な連続殺人事件、出生の秘密、友情と裏切り、犯人をおびき出すための驚く罠など、中篇に密度よく描かれ、良質なミステリーといえるでしょう。

 同時収録は「姉貴は年した!?」 「パパとパイプ」 「兄貴にさようなら」の3篇です。「パパとパイプ」はシリーズになっていて作品は他の単行本にも分散して収録されています。
収録は「姉貴」「兄貴」と対になっていたのですが、78年頃の再販からは「兄貴にさようなら」がカットされ、「パパ!」(デビュー作)に差し替えられました。
 理由は「オシ」という内容。言葉の差し替えだけでは解決しない、聾唖者への差別がテーマになっているため収録が難しいのでしょう。
 主人公の詠子(エコ)は兄に恋人ができたのを初めは喜びますが、彼女が孤児で口がきけないと知ってショックを受けます。その理由がただ身内が障害者なんてとんでもない、みじめだという生理的嫌悪だけの描写なのが問題なのでしょう。もちろんエコも差別はいけないと心では思っているのですが、どうにもできないところに人間のエゴが感じられ、やるせない思いになります。偏見が緩和した現代の感覚から見て、やはり収録は無理だったと思われます。

 AKIは和田慎二が好きで、すべての作品を買っていましたが、出版社との事情で絶版が多く(他社から復刻されたものあり)、一時期、執筆が少なかったのには心配しました。未完のシリーズが多く、「あさぎ色の伝説」「忍者飛翔」「超少女明日香」シリーズはぜひ続きを描いてほしいものです。
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