あかねちゃん
(原題 みそっかす)

著者 ちばてつや





講談社コミックス 全4巻

 「あかねちゃん」はちばてつやの代表的な少女漫画です。ちばてつやの少女ものといえばほかにも「ママのバイオリン」「123と45ロク」「島っ子」など多くの作品があります。
 この作品は昭和41年に週刊少女フレンドに連載されました。タイトルは「みそっかす」です。昭和43年に初単行本化されましたが、その年のアニメ化にあわせて「あかねちゃん」と改題されての出版でした。

 上記の単行本はその当時のものです。定価は1冊220円でした。「みそっかす」は何度も単行本化されましたが、次の汐文社以降はタイトルが原題の「みそっかす」に戻っているので、「あかねちゃん」として出版されたのはこの講談社コミックス版だけです。

 お金持ちの上条家に生まれた茜は体が弱かったために伯父の草介に引き取られて紀伊の田舎で育ちます。10歳になった茜は6年ぶりに上条家に戻ってきますが、とんでもないお転婆な野生児と化していました。
 上条家のやっかい者になった茜ですが、エリート学校の白樺学園に編入になります。そこで登場するのが学園創立者の孫の北小路秀麿です。茜になついてひたすらくっついてくるハナタレ小僧の秀麿と学園での生活が始まります。
 二人でいろいろな騒動を起こしながら、学園を乗っ取ろうとする教頭と北小路家の執事の陰謀にも立ち向かっていく・・・といった内容です。

 あかねちゃんはアニメでもお転婆振りが有名ですが、原作はよりワイルドです。声を当てた松島みのりはどちらかというと上品な声なのでアニメでは大人っぽく優等生な感じでした。

 原作のクライマックスの全国学力テストでは茜が全教科で満点をとりますが、教頭たちの悪事を答案用紙に書いたために失格になってしまいます。アニメでも最終話近くのエピソードとして、茜が試験中に倒れる生徒を見て答案用紙に勉強のあり方への疑問を書くシーンがありました。当時は受験地獄が問題になっていたので、この展開はその影響なのでしょうか。




講談社ちばてつや漫画文庫 全3巻

 昭和52年に講談社から「ちばてつや漫画文庫」が刊行されました。これはその中で全3巻で出版されたものです。定価は300円です。タイトルが連載時の「みそっかす」になっています。当時は第1次漫画文庫ブームでしたが長く続かず、ちばてつや漫画文庫も中途半端だったようです。AKIは少女漫画系だけ購入しました。
 文庫の「みそっかす」は講談社コミックス全4巻を3巻に再編集してあります。カバーイラストは書き下ろしで上掲のKC版カバーイラストから10年近くの差ですが、かなり絵が違っているのがわかります。
 ちなみに講談社ではのちにKCフレンドからも全3巻で「みそっかす」を出版しています。


 それではモグベエの感想をお楽しみください。文中の巻数は全3巻バージョンを指しています。



                         モグベエ感想

 この作品は、私はアニメ「あかねちゃん」から入りました。とは言ってもテレビでは見ておらず、私の知識は主題歌と、秋元文庫から出版された「テレビアニメ全集」の解説と、19歳のとき扇屋ジャスコの「日曜アニメ劇場」で見た第一話だけでした。

 その「テレビアニメ全集」では、「明るく庶民的」「きびきびしていてやさしいあかねはすぐに学園の人気者になる」「学園で起るさまざまな事件を次々と解決していく」「愉快なものがたり」と書かれているので私は鵜呑みにしていたのですが、原作では大違いなので少々ショックを受けました(「明るい」と「きびきびしている」は当たっているかもしれませんが)。

 中盤までのあかねはわがままで反抗的で乱暴もの、他人への思いやりのかけらもありません。おまけに催眠術で皆をだましカンニングをする始末。そのテスト用紙を写させてあげただけで秀麿があかねの崇拝者になったというのも説得力に欠けます。老犬のチビを熱心に世話するあたり、根の悪い子ではないのは分かるのですが・・・。
 特に気の毒なのが母親です。実の母なのに「おばさん」と呼ばれ逆らわれ続け、それでも一生懸命優しくしようとしているのにはねつけられるのですから。

 学園でも問題児で、変わり者の理事長に気に入られたり良い担任に恵まれたりしたものの、ほとんどの生徒からは冷たい目で見られていました。「事件を解決した」のは一回きりですし、全体を通して、決して「愉快なものがたり」ではありません。

 とてもじゃないけど感情移入できそうにない主人公だなぁと思って読み進めていましたが、中盤になって変化が起こります。秀麿のすなおさに感化され、家族への態度を反省するのです!そして反抗をやめるのですが、時すでに遅し(>_<)。気持ちがすれ違ってしまいます。

 3巻目は、北小路家の執事(?)と学園の教頭が、北小路の事業や学園をのっとる計画の話が中心になります。できの悪いあかねと秀麿を権威あるテスト大会に出場させて学園の名誉を傷つけ、理事長や担任教師の責任を追及して退任させようとするのです!
 それを知ったあかねはカンニングで乗り切ろうと催眠術の練習に励むのですが、必死に勉強する秀麿を見て自分を恥じ、テストまでの一週間、まじめに勉強することにします。

 そして、全国から選び抜かれた優秀な生徒ばかり集まるテスト大会で、秀麿は2教科で満点を、あかねは全教科で満点をとるのです!!
 しかもあかねは答案用紙に二人の悪事を書き綴っていました。そして翌日、二人は詐欺罪で逮捕。一件落着で、あかねは置手紙をして自分の家に帰ります。

 しかし・・・私も受験勉強の経験がありますが、いくら全力で頑張っても、学力などそう簡単に身につくものではありません。それをたった一週間で、しかも底辺だった二人が全国で一番の成績をとるなど、人をばかにした話でちょっぴり腹立たしく、「漫画だなぁ」と思わざるを得ません。せめで3ヶ月の猶予があり、あかねはクラスで一番、秀麿は平均点をとった、でも充分すぎると思うのですが。
(「101回目のプロポーズ」でも武田鉄也は結局、司法試験に落ちましたしね・・・)

 物語の終盤は、落ちぶれて気持ちまですさんでしまった上条家の皆を見てショックを受けたあかねが家出をして紀伊に帰ったら、なんと死んだと思っていた父親が生きていて再会!他の家族も呼び寄せて紀伊で一緒に暮らすことになった、で終わります。
 あかねに振り回され続けた上条家の人たちもハッピーエンドで、よかった、よかった(^_^)。

 残念だったのは、心を入れ替えて友好的になったあかねと母親が心を開きあう感動の場面を見られなかったこと。きっと紀伊で再会後、良い親子、良い家族になったであろうけど、それを読者に見せてほしかったです。

 でも一番すてきだったのは、あかねが秀麿の家を去るときの置手紙。「家庭教師らしいことを何ひとつせず かえって秀麿くんに教えられることのおおい毎日でした」
 そう、あかねが変わったのはすべて秀麿のおかげ。一回目は「すなおさ」、二回目は「まじめに勉強」。また、思いやりの心が芽生えたのも秀麿を見てのことでした。私はそんな、ウスラに見える秀麿の良い面を見て自分を反省できるあかねの素直さを見習いたいと思いました。


2005.10.27




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